PFでNAT64 - OpenBSD 5.1
NAT64とは、DNS64と組み合わせることにより、IPv6 onlyネットワークからもIPv4のサービスにアクセスできるようにする機能のこと。これをサーバ上で実現する方法としては、
がある。今回はPF (OpenBSD 5.1)を使った。
以下、上記それぞれについて少々。
linuxnat64
linuxnat64はちょっと前までsourceforgeから利用可能だったみたいですが、今はなくなってしまいました。探してみたところ、簡単には見つからないみたいです。私は、知り合いからソースコードを貰いました。少なくとも、Ubuntu 10.04.3 x64では動くみたいです。
Ecdysis (linux)
Ecdysis: open-source nat64から利用可能です。ただ、ネット上や知人からの情報だと、linuxではうまく動かない(tcp seqがずれたり、chksumがおかしかったりpayloadが壊れたり)という噂を聴いたので不安になりました。
実際にインストールしてみたところだと、はじめはping6は通るけど、wgetが時々失敗するという現象に遭遇しました。しばらくすると安定して動き始めたのですが、不具合の原因はいまいちわかっていません。うまく動くこともあるようです。
Ecdysis (pf patch for OpenBSD 4.6)
すでにkernel patch済なisoがEcdysis: open-source nat64の最下にあります。これは導入しやすそうな気がしますが、試していません。
Tayga
これはstatelessなNAT64で、今回の要件にマッチしていないので使いませんでした。stateless NATというのは、変換前のIPアドレスと変換後のIPアドレスが1対1対応するとかなんだかそういう感じだったと思います。
NAT64の設定
OpenBSD 5.1のセットアップ
インストーラisoはOpenBSD: Mirrorsから辿ると落とせます。私は、http://ftp.jaist.ac.jp/pub/OpenBSD/5.1/amd64/のinstall51.isoを使いました。
OpenBSD FAQ: Installation Guideこのへんでも見るといいです。インストーラの指示に従うだけですが、Ubuntuしかインストールしたことない人にとってはちょっと難しいかもしれません。
この辺はもしかすると少しはわかりやすいかもしれない。OpenBSDのインストール方法詳細メモ(1) - 情報科学屋さんを目指す人のメモ(FC2ブログ版)
NICの設定
用意すべきは
です。これらが確保できたら、 /etc/hostname.
# vi /etc/hostname.em0
inet 192.0.43.10 255.255.240.0 inet6 2001:500:88:200::10 64 !route add -net default 192.0.43.1 !route add -inet6 default 2001:500:88:200::1
192.0.43.10はNAT64をするマシンのIPv4アドレス
2001:500:88:200::10はそのIPv6アドレス
192.0.43.1はNAT64マシンがいるセグメントのdefault gateway
2001:500:88:200::1もdefault gateway
意味を考えて、適宜自分の環境にあわせて読み替えてください。
/etc/hostname.
# /etc/netstart
で設定を反映。
pfの設定
デフォルトでは/etc/pf.confが設定ファイルです。
# vi /etc/pf.conf
これに以下のような行を追加してください。
# nat64 pass in quick inet6 to 2001:500:88:200::10 pass in quick inet to 192.0.43.10 pass in inet af-to inet6 from 2001:500:88:200::10 to 2001:500:88:ff64::/96 pass in inet af-to inet6 from 2001:500:88:200::10 pass in inet6 af-to inet from 192.0.43.10 to 0.0.0.0/0 pass in inet6 af-to inet from 192.0.43.10
ただし、これをやると他のインターフェースにも影響を与えるかもしれないので、
set skip on em1
でルール適用除外したり、af-toルールの適用条件に on em0 加えるなどして調整してください。
各行の意味は、
- 64変換すべきではない、自分(NAT64マシン)宛のパケットは自分の方に受理してあとの64変換ルールを適用しない
- 同上
- 2001:500:88:200::10に設定されたインターフェースに2001:500:88:ff64::/96宛のパケットが届いたら、宛先アドレスの下位32ビットからIPv4アドレスを取り出し、そのIPv4アドレス宛てのパケットへと変換する(NAT64の動作)
- ようわからん
- 192.0.43.10に設定されたインターフェースに届いたパケットの送信元IPv4アドレスを2001:500:88:ff64::の下位32ビットに埋め込み、IPv6パケットにに変換する(NAT64の動作)。
- ようわからん。
ちなみに、2001:500:88:ff64::/96はNAT64の変換用プレフィックス
こんな感じで動いています。af-toっていうのが肝心ですね。私にはよくわかっていない部分もあります。
気になる人は、OpenBSD manual pagesでも見てください。
2013/02/24 追記
現在検証したところ, pf.confはもっとシンプルに書けるようです。
# vi /etc/hostname.em0
inet6 2001:0DB8:100::2 64
# vi /etc/hostname.em1
inet 192.0.2.2 255.255.255.240
# vi /etc/pf.conf
pass in quick inet to 192.0.2.2 pass in quick inet6 to 2001:0DB8:100::2 pass in inet6 from any to 2001:0DB8:64::/96 af-to inet from 192.0.2.64/28 to 0.0.0.0/0
この例では, nat64マシンの
- 実IPv4アドレスが192.0.2.2/28
- 実IPv6アドレスが2001:0DB8:100::2/64
- nat64変換先IPv4アドレスプールが192.0.2.64/28
- nat64変換元IPv6プレフィックスが2001:0DB8:64::/96
という条件下でnat64トランスレーションを行なっています。
/etc/pf.confの各行の意味は,
- 実IPv4アドレス宛のパケットには変換ルールを適用せずにnat64マシンが受け取る
- 実IPv6アドレス宛のパケットには変換ルールを適用せずにnat64マシンが受け取る
- 送信元IPv6アドレスが任意で, 送信先IPv6アドレスが2001:0DB8:64::/96 (変換元プレフィックス) のIPv6パケットは, 宛先IPv6アドレスの下位32bitに埋め込まれた本来の(designated)宛先IPv4アドレスを取り出し, 宛先IPv4アドレスを抽出したIPv4アドレスに, 送信元アドレスを192.0.2.16/28 (変換先アドレスプール)のいずれかのアドレスに変換して転送する
と言ったところです。pfのnat64はステートフルなので, inet6 (IPv6) -> inet (IPv4)の変換ルールを書いておけば, NATテーブルを参照することで戻り(inet -> inet6)の変換も行えることから, 特にinet -> inet6の変換ルールを明記する必要性はありません。
あとはルーターには2001:0DB8:64::/96のnext-hopを2001:0DB8:100::2とする経路を書いておけば, nat64が使えるはずです。
追記ここまで
設定が書けたら、
# pfctl -Fa -f /etc/pf.conf
でルール適用。基本的にはこれで完成です。
実際にこのNAT64を使うためには、
- DNS64を建て
- DHCPv6にDNS64の設定を入れ
- ルーターで2001:500:88:ff64::/96プレフィックスのNext hopをNAT64機(2001:500:88:200::10)へ向ける
といったことが必要になるはずですね。他にも必要な作業が抜けているかもしれないですけど、気づいた方はご指摘ください。